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Number 10/14号 朝青龍インタビューを読む(2)

雑誌Numberから、朝青龍インタビューの続き。
引退を決定付けた理事会での喚問の席で、
言い分にまるで耳を傾けてもらえなかった朝青龍。
その理由を当人はどう思っているのか、インタビューアーが聞いている。


―それはなぜだと思いますか。

「多分ね、朝青龍みたいな人間って、あんまりいないと思うよ。
自分の土俵での振る舞いはオーバーなところもあったかもしれないけど、ただのパフォーマンスじゃないの。
相撲界の人間関係として、真面目な子、素直にハイハイっていう子が好かれるんだろうけど、
自分は好きじゃない。
人に合わせて相撲を取るわけじゃないからね。
人の気分に合わせて相撲を取るなんて冗談じゃない。
相撲はね、一瞬に命を賭けるものなんだ」


散々非難された土俵上でのオーバーな振る舞いは、
朝青龍にとっては「ただのパフォーマンス」でしかなかった。
しかし彼を批判する側にとって、
それは土俵の美学を破壊するものであり、
長く親しんできた大相撲の雰囲気を台無しにするものだった。

相撲協会、横綱審議委員会、親方、マスコミ、
あらゆる方面から指導や非難をうけながら一向この人が変わらなかったのは、
この認識の違いが根本にあったのだろう。

さらに考えさせられるのは、
朝青龍の言い分は最初土俵上の所作のことを話していながら、
それが土俵を降りてからの人間関係に移り、
最後には軍配がかえってからの勝負そのものに話がスライドしているところである。

つまり彼にとっては全てが一緒だったのではないだろうか。
軍配がかえってからの一瞬に命をかけた戦いと同じ様に
土俵を降りてからのあらゆる指導・批判にも、模範として押しつけられた土俵上での立ち居振る舞いにも、
命を賭けて立ち向かってしまったのではなかろうか。
意地の悪い見方かもしれないが、そんな気がしてならない。


また土俵上での振舞い、つまり勝負前勝負後の礼儀作法も、
軍配がかえって勝負が決まるまでの戦いそのものも、
この人にとっては一様に同じものだったのかと思うと、
つい考えさせられる。

大相撲の魅力は人それぞれにあるだろうが、
土俵上の所作に関する限り、
私は根本的にはその「チラリズム」が見るものを引きつけるのだと思う。

両力士が土俵に上がる。
互いに闘志はあっても、あくまで二人は決められた所作を坦々と遂行していく。
しかし決められた所作の中の目の色、表情、仕切るタイミング、塩のまき方、
そこに垣間見える力士たちの心の動きを想像しながら、
ファンはあの一見単調な儀式を楽しむのではないか。

そして軍配がかえるや否や、
静かだった両力士は突如猛獣のように組み合い、
それこそ朝青龍のいうように、命を賭けた一瞬の勝負を繰りひろげる。

しかし勝負がついたその瞬間、
二人は何事もなかったように自陣に引き返し、
誇る気持も口惜しい気持も押し殺して互いに礼をし、
静かに去ってゆく。

ちょっと理想的に書きすぎた嫌いもあるが、
こうした静→動→静のコントラスト、合間の一瞬の格闘、
あるいは仕切りという静の中にふと見え隠れする力士たちの思い。
本来持っている闘争心は一連の儀式の中で徹底的に抑圧され、
抑圧されているだけに、チラリと見えた瞬間それが貴いものに映る。
それが大相撲の魅力の一端ではないだろうか。

チラチラしているから良いのである。
街中を丸裸で歩く異性がいても人は興奮しないのと同じことだ。
(まあ、するかもしれないけど)

ともあれ勝敗がついたのにダメを押したり、
勝ったあとで観衆に向って土俵上からガッツポーズをしたり、
判定に不服だからとさがりを相手にぶつけたりといった行為が
しらけて見えたのは、こうした大相撲の魅力をぶち壊していたからだろう。

テレビで時折アマチュアの相撲が放送される。
みな平気で土俵の上でガッツポーズも取るし、
土俵を降りたら下で向かえる仲間たちと笑顔でハイタッチをする。
昔はチリを切りながら大声で「ターッ」と気合を入れるものもいた。
彼らのしていることは大相撲に比べてひどく安っぽいものに見える。

それは単に外見やレベルの違いだけから来るのではなく、
大相撲のような厳然とした作法がないせいだろう。
そうした魅力をまるで理解せずに
「ただのパフォーマンス」としか自分の振る舞いを認識できていなかった朝青龍。

つくづく残念だった気がしてならない。



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テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

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プロフィール

うぃぬっ

Author:うぃぬっ
相撲の好きな犬。新潟県在住。近眼。千代の富士の時代に相撲を見始め、若貴時代はヒネくれていたのであまり見ず、朝青龍のときにまた見始めて現在に至る。

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