スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

魁皇の自伝を読む

怪力―魁皇博之自伝怪力―魁皇博之自伝
(2009/11)
魁皇 博之

商品詳細を見る


去年の11月、およそ一年も前に出た本だが、今頃読んだ。

力士や親方の自伝と云うと「人間辛抱だ」的な説教臭いものも多いのだが、
この本は魁皇自身の豪放磊落な人柄もあいまって、楽しい本に仕上がっている。

力士の伝記ものを読むと、自分が相撲が好きで入ったという人はまずいない。
ほとんどの人が無理やり勧誘されたり、家が貧しくて仕方なくであったり、
騙し騙し東京につれてこられたりしているのだが、魁皇も例外ではない。

相撲に関しては、小学生のころから体格がよかったので地元の大会にはよく担ぎだされていたという。
お尻を出すのが恥ずかしくて逃げ回っていたが、出れば殆ど優勝し、東京の部屋から勧誘も多かったらしい。




ここで個人的なことを書けば、わたしは小学生のころ相撲が大好きであった。
クラスの中では結構強い方で、毎日校庭で友達とズボンのベルトをまわしに見立てて
ハッケヨイノコッタをやっていたものだった。

市のちびっ子相撲大会というのがあった。
魁皇のように誰かから担ぎ出される事もなかったので自分で出た。
大会はトーナメントだが、参加者はそれなりに多い。
きちんとした回しは全員分行き渡らない。
仕方がないので1、2回戦は海水パンツにさらしを巻いたのがユニフォームであった。
上位に進めば白いちゃんとした回しが貸し出されるのだ。

平均的な体格であった私の1回戦の相手は、私の2倍くらい体重のありそうな子。
しかし学校では大きな子を相手にしてもそれなりに渡り合っていたので、勝つ気は満々であった。
開始5秒ほどで押し出された。
非常にくやしかったが、何だか勝手が違うと不思議でならなかった。

私の相手はよく見ればコーチがいて団体で参加しており、
どこかの相撲クラブの一員であった。本格的に習っている子だったのだ。
校庭で友達同士やっている程度では叶わないのも当然だった。

彼は順調に勝ちすすみ、とうとう居残って見物する私の前に立派な白い回しを締めて現れた。
むろん海水パンツなどはいていない。
衆人の前でお尻をむき出しにして仕切る彼の姿を、私は羨望のまなざしで見つめたものだ。

仕様もないことを長々と書いたが、
お尻を出すのを恥ずかしがった子が大関となり、
お尻を出したくてたまらなかった子が今は一般人でいるという
人の世の無常を書きたかったんである。





魁皇に話を戻すと、勧誘があってもあまり気は進まず、どこか入れそうな高校に進学するつもりだったらしい。
ところが中学3年のころ

同級生たちが次々に志望校を決めていく中、何気なく言った一言が運命をガラリと変えた。
「オレ、九重部屋の稽古でも見に行こうかな」
なぜ九重部屋と言ったのかというと、当時は力士といえば千代の富士くらいしか知らなかったからだ。
この言葉を聞いて相撲界入りに脈アリと色めき立った人たちが、すぐに現在の師匠に連絡を入れた。


本人は「何気なく」と記しているが、
「九重部屋」「稽古」といったことばが全く相撲に関心のない子どもから出てくるとは思えない。
おそらく、のんびり屋で、特にやりたい事もなく、だけど体は大きくて相撲は誘われれば出て勝っていた…
そんな子供がちょっと友達にからかわれた拍子に口を突いた言葉…
そんな感じではなかったろうか。半分以上妄想であるのだけれども。

ともあれ連絡を受けた師匠の友綱親方は、
魁皇の地元の相撲大会に以前顔を出しており、小学生時代の彼を覚えていた。
連絡をもらうと「あの子か」とすぐピンと来たという。

あの小学生が立派な体格の中学生になっていた。
精神面ではちょっと足りない面もあったが、それは入門してから鍛えていけばいい。
九州場所の部屋の千秋楽パーティーに呼ばれ、わけも分からないまま壇上に上げられて、
「来春に中学を卒業して、春場所に初土俵を踏みます」と紹介された。
もう中学生の自分では、どうすることもできないほど外堀が埋められてしまったのだ。


ほとんど人身売買のようだが、こんな子が大関になってしまうのだから分からないものだ。

なんだか初めの方ばかり紹介してしまったが、この本の読みどころは他にも多々ある。
幾度となく逃した大関取り、綱取り、そのたびの心境。
さらには現在大関として成績面では賛否両論あるなかでも土俵に上がり続ける、その胸中。
といって深刻な話ばかりではなく、酒豪らしいこの人の宴席での失敗談など。
興味のある方は御一読を。

そうだ難点が一つ。
おすもうさんの伝記にはよくある作りなのだが、
この本でも場所ごとの星取などは、巻末に「生涯戦績」のようなかたちでずらっとまとめて掲載してある。

これだと本文で各場所の回想を読みながら、
星取が見たいときにはイチイチ本の終わりをめくって探さないといけない。
本文の中で場所ごとに挿入されていれば、もっと読みやすくなるだろう。

力士の伝記などはそう部数が売れるものでもなかろうから、あまり手間暇もかけられないのかも分からない。
しかし少ない相撲ファンを増やす意味でも、出版社の方には工夫して欲しいところだ。

スポンサーサイト

テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

うぃぬっ

Author:うぃぬっ
相撲の好きな犬。新潟県在住。近眼。千代の富士の時代に相撲を見始め、若貴時代はヒネくれていたのであまり見ず、朝青龍のときにまた見始めて現在に至る。

リンク
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
月別アーカイブ
参加中
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。